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BLOG

京都で活動する演劇団体『空降る飴玉社』のブログ『ボルガライスは、Que buena!〜愛しの江州田梨子に捧ぐ。〜』全公演無事終演いたしました。ご来場いただいた皆様ありがとうございました!

小説:好きに語ろう『トリツカレ男』

こんばんわ、空降る飴玉社の加藤です。
一気に寒くなりまして、末端冷え性の私は手足が冷たい毎日を送っています。
汁物が美味しい季節になりましたね。私は何でも汁物にしてしまいます。お気に入りは白菜と大根と生姜のとろみスープです。うまいんですよ~腹もちもいいし、野菜美味しいし、体あったまるし…。これからもっと寒くなるし外せませんね…!

さて、今回も小説を好きに語って行きます!!
今回は加藤がここ近年で一番好きな作品……こちらです!


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『トリツカレ男』いしいしんじ

ジュゼッペのあだ名は「トリツカレ男」。何かに夢中になると、寝ても覚めてもそればかり。オペラ、三段跳び、サングラス集め、潮干狩り、刺繍、ハツカネズミetc.そんな彼が、寒い国からやってきた風船売りに恋をした。無口な少女の名は「ペチカ」。悲しみに凍りついた彼女の心を、ジュゼッペは、もてる技のすべてを使ってあたためようとするのだが……。
まぶしくピュアなラブストーリー。



この小説は読書が苦手な人でも最後まで楽しみながら読める一作だと思います。
全部で160頁。ちょっとした時間の合間でも、気負わずにストーリーに入り込める優しさと世界観を持っています。この作品の魅力は何と言っても登場人物みんなが個性豊かなところ!そして主人公のジュゼッペとヒロインのペチカ、ハツカネズミ、タタンのメインどころの四人(三人と一匹)がとても情に深い。それぞれが起こす行動が、”それぞれの登場人物の為の行動”ばかりで溢れています。その誰かの為の行動が人を動かし、人を少しずつ変え、笑顔にしていく。それをとても間近で感じることが出来るのがこの作品です。読んでいて、きらきらとした気持ちが胸の底から溢れだしてくるような温かみがあります。

「トリツカレ男」のジュゼッペはトリツカレたものにはとことん極めていきます。いや、とことんトリツカレるのでしょうか……。寝ても覚めてもそればかりに熱中してしまう癖があります。そして、そのトリツカレたものに夢中になって奔走する姿は、はたから見たらきっと可笑しいのに、”辛い”部分も多いのに、少しもそれらを感じさせない。ジュゼッペのひたむきさは読んでいると、読んでいるこちらが「がんばれ!」と応援したくなるような、いいなと憧れるような気持に駆られます。そして、そのひたむきさの形に知らず知らず触れていくペチカの悲しみに凍った心が、少しずつ少しずつ溶けていくところにも、ほっこりします。
だけど、この『トリツカレ男』、そのままハッピーエンドに進んで行くわけじゃない。ペチカの心は溶けていく一方で絶対に溶けきらない”訳”があった。この最大の試練へのジュゼッペの行動にも、読んでいるこちらは固唾を飲んで見守ることしか出来ないのですが、読んでいる自分がジュゼッペの友達のハツカネズミの気持ちのようになりながら、この「トリツカレ男」の為に何かをしたくてしようがないと思ってしまいます。


この『トリツカレ男』最大の魅力はやはり「ジュゼッペ」という主人公にあるように思います。この一風変わった「トリツカレ男」がペチカの為に引き起こす奇跡。ジュゼッペとハツカネズミ、ジュゼッペとペチカ、ペチカとタタン、そしてジュゼッペとタタン………。トリツカレたから起きた奇跡の展開と人間模様と関わりは、他の作品ではなかなか見れない、純粋さとひたむきさと馬鹿な程の強いきらめきがあります。まさにピュアです。

そして、このジュゼッペが生まれ育った町の風景や、ペチカがジュゼッペと出会う前の思い出の風景も印象深く、場所や物からもその人となりを感じることが出来ます。登場するたくさんの場所やシチュエーションなどの世界観も、物語の色を濃く映してくれてます。ここにもぜひ注目して下さい。魅力的です。

少し疲れてる人や、ゆっくりしたい人にぴったりの作品だと思います。



もしよろしければ
『トリツカレ男』いしいしんじ
読んでみてください。



それでは、今日はこの辺で………。
暖かくしてゆっくり休んでください。
ではでは。


空降る飴玉社
加藤

小説:好きに語ろう『午前0時の忘れもの』

こんばんわ。
空降る飴玉社の加藤です。
先週あたりからグッと寒くなり、秋を吹っ飛ばして初冬のような寒さになりましたね。だと思ったら今日また少し暑くなりましたね。気温に振り回されがちな今日この頃、皆さんはどうお過ごしですか?
まだ紅葉の季節には早いみたいで、早く紅葉の綺麗に染まった木々が見たいなあと思っています。今年は去年より早く冬が早く来そうなので、今のうちから秋を堪能しておこうと、色々計画を立てています。

今回も加藤のおすすめの小説を語っていきます!


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『午前0時の忘れもの』赤川次郎

愛していれば、奇跡もきっと起こる―――。
高速バスが湖に転落する事故で、四十人余りの乗客が帰らぬ人となってからちょうど一ヶ月。湖の底に沈んでしまった死者たちから愛する人たちへとメッセージが届く。メッセージに導かれ、深夜のバス・ターミナルに集まった人々が出会う不思議な出来事とは?

生きることの切なさと命の輝き、人を愛することの素晴らしさを描いた、赤川ファンタジーの傑作!


この小説は最初から最後まで楽しめる作品です。
中表紙を捲った後の始めのページにある著者からのメッセージ。このメッセージが、ファンタジー作品を書いたことのある自分は強く共感し、響き、胸を抉られました。そこから、この作品の深みとドラマチックさを噛みしめながら、ストーリーを楽しみました。
この作品の登場人物は出てくる全員がメインどころの個性や事情を抱えています。年齢も職業も、生きざまも様々です。そんな日常では触れ合う機会がない人達が、バス・ターミナルに集まり同じ時間を過ごす。それだけでもドラマが生まれる予感があります。そして集まった理由からも、それぞれのドラマを読み解くことが出来ます。この話は『再会』と『別れ』が同時に描かれています。よく死者と残された人達とのバランスが同率ではない作品は見かけますが、この作品はフィフティフィフティで描かれています。どちら側にも人生が見え、どちら側の心情にも共感できる部分がたくさんちりばめられています。死者だけど、生きていた頃と変わらぬその人達の言動や人となりがそのまま描かれていて、違うのは心臓が動いているかいないかだけです。『先行く人達のメッセージ』と『残された人達の未来』がどうか交わり続けますように、と願わずにはいられない作品です。
こんな奇跡、理屈で考えたらないだろうと思うけれど、それでも、この話みたいなことがこの世のどこかでは起こっていそうだと、期待するし、期待したいと思える、間違いない『人の奇跡』の話だと思う。
学生も社会人も、結婚している人も、失恋した人も、今を迷っている人も、抜けられなくなっている人も、きっと共感し、感動できる作品だと思います。
感動するってとても難しいことですからね。


赤川作品のもう一つの魅力は何と言っても作品のタイトルです。
どの作品でもタイトルと言うものは、作品の導入部分であり、作品の核の部分を担い、作品の比喩、作品の大筋のイメージと雰囲気を伝えてくれるものです。私は題名が作品の中見と同等に物書きとしては一番こだわるべきところだと思っています。本屋に入ると、まず一番最初に目につくのはタイトルです。そこから表紙のイメージ、裏のあらすじへと興味が移ります。やっぱり買うのは題名で選ぶことがダントツで多いですね。
赤川作品の題名はどれもドラマ性がある題名ばかりです。矛盾していたり、一見は合わせることない二つの単語を埋め込んで題名にしているものも多く、矛盾をはらんだ単語同士がつくる非常さが、題名の中にあるドラマへの期待を高めてくれます。そして使う単語が誰もが一度は耳にしたことのあるなじみの単語が多いです。その単語に私は安心して先入観なく、じっくりと作品に入ることが出来ます。今回紹介している『午前0時の忘れもの』も寝静まっている時間帯である”午前0時”のこんな時間帯に一体何の”忘れもの”を誰がしたのだろうと、時間帯×名詞の非常さが出ていて興味をそそられました。タイトルにもたくさんのドラマが詰まった赤川作品は、たくさんの体験をさせてくれます。これも赤川作品の魅力ですね!


もしよかったら、
『午前0時の忘れもの』赤川次郎
ぜひ読んでみてください。そこにはたくさんのきらめきと、リアルと、奇跡が詰まっていますので……。

それでは、今回はこの辺で。
秋の味覚たくさん楽しんでください。
では。




空降る飴玉社
加藤

先生とお茶してきました

こんばんわ、空降る飴玉社の加藤です。
この間の三連休、地元に帰り、恩師の一人とお茶をしてきました。

自分が書く脚本にはたくさんの先生と呼ばれる人たちが登場します。
小説家の先生や、担任の先生など……。
『河童』『EACH WAYS』『So long, but』『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』には職種も性格も役割も全然形は違いますが、個性豊かな先生が登場しました。

私は高校時代三人の先生に大変お世話になりました。全員教師です。
そのうちの一人の先生とつい先日6年振りにゆっくりと話をしました。
地元の新しく出来たケーキ屋でお茶をしたのですが、話していて何故か懐かしいという感覚は無くて、もしかしてこれは自分が全く成長していないからなのか?と考えたのですが、よくよく感がえれば、その先生とは直接6年振りに顔を合わせてゆっくりと話をしましたが、顔自体は3年前にも合しているし、話はよく電話をしていたので、軽く久しいという気持ちでお会いしました。
それでも、6年振りに顔を合わせてゆっくりと話をすれば、やはり懐かしいと思う部分は多くて、6年前も先生にたくさんの話をして、たくさん相談に乗ってもらっていたなあと思いました。実は、大学入学するのもこの先生に相談をしていて、その時、先生に背中を押してもらったから今があると言っても過言ではありません。もう6年も経つのかとありきたりな感想ではあるけれど、実感をしました。まだまだ、発展途中だから、懐かしいよりももっと人生の切り抜きをした芝居をつくっていきたいという気持ちの方が何倍も強いので、実感は濃くはないけれども。

先生の娘さんは演劇の衣裳の仕事をしていて、先生自身も大学演劇をしていたそうで、今でも演劇をよく観に行くそうで、実はこの間の『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』もご来場いただいていました。レターツリーの話をしつつ、次回の話もして。先生は前の私よりもたくましくなったと少しの思い出話もしました。


そこで気がついたことなのですが、先生が話す当時のことを、実は私はあまり覚えていなかったりします。いくつかの話をしていて、う~ん、そうだったような…?と私は言われて思い出したようないないような…ってことをたくさん覚えています。そうすると本当にたくさんお世話になったんだなあと思うのと、6年もほとんど会わなかった教え子とのエピソードを何年も覚えていてくれる、先生って存在はこれからの人生ではあまり現れてくれないんだろうなとも思います。
私はもう大学を卒業して、社会人になって数年が経ちます。空降る飴玉社の前に劇団鬼灯と言うところで座長をしていた頃から換算するともう5年近く組織のトップを担わせてもらっているけれど、人生を更新できているかどうかは正直分かりません。もちろん前出来なかったことが出来るようになったことはたくさんあって、自覚をすることもあるけれど、多分それが成長であって更新だと思うのですが、まだ足元がふらふらしていることが多いような気がします。
色んな事に迷う事が増えて、自分を崩さない為に割り切ることが増えたからでしょうか。そして悩むことは減りました。社会人になって学生の頃より、自分の足元を良く見るようになったからだと思います。自分の立ち位置とか、自分の役割とか、ここで体力を使っていられないとか、色々。その度に、自分の出し方や自分が分からなくなったりします。自分を理解しようとか、自分を出して行こうとか考えるけれども、なかなかどうしてこれが難しいんですね。
先生の話を聞くたびにあの頃の自分はまだまだ未熟だったけれど、見てくれる人がいて、もっと自分で直球勝負してた気がします。

まあ、これからに関しては自分が努力して、勝負して、立ち回って行くしかないと思うので、ある意味で自分の発言自分の行動が全てになったことを自覚したし、ひとつひとつ踏みこんで行くしかないのですが。


地元に帰って、先生とゆっくり話が出来て、楽しかったです。まだまだ頑張れそうだし、また背中を押してもらいました。
私にとって先生は、親や友達とは違う、変わった存在です。学生の頃に10代の頃に、居てくれたから、こうやって自分のやりたいことに向きあえているんだろうなって思います。自分の人生と向き合ってくれた人達だと思います。


過去にアンケートで「加藤さんは素敵な大人に恵まれたんですね。」という言葉をもらったことがあります。

当時はそうか?と思っていましたが、今は、そうだな。と思います。
こういう変化だとか、当時は気付けなかった大きさだとか、それを改めて、先生と話して気づかされました。この変化をこれからの作品に乗っけれたら面白いんだろうなと、思っています。


たくさん話が出来て、直接会う事が出来てとても素敵な時間でした。次回作も新しい気付きを持って作品に挑みたいと思います。
それでは、最近朝と夜が冷えるようになったので、季節いの変わり目の風邪にはお気を付け下さい。
それでは、おやすみなさい。



空降る飴玉社
加藤

地元の良きとこ、とか

こんばんわ、空降る飴玉社の加藤です。
皆さんは三連休をどうお過ごしになられましたか?
私は、地元福井に帰り、次回作品の資料集めと家族や恩師と充実した時間を過ごしました。

実は元々地元に戻るのも学生の頃は一年に一度帰れば良い方で、滞在も2日とかだったのですが、社会人になってからはちょくちょく帰るようになりました。
社会人になってから地元に帰るのは大切だなと感じるようになりました。

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来年の3月に予定している次回作品は、地元で暮らす人、地元を離れて生きる人に贈る初のコメディ作品を上演します。
そこで早速福井でフィールドワークをしてきました。
フィールドワークと言っても地元なので、ほとんどは地元を離れた人間がもう一度地元の感覚を再確認したり思い出したりすることや、名産物の味の良さを体験したりとか、福井県民の雰囲気や名産品をつくってる姿を実際に見たり、道の駅やフェアに行ったりしてきました!

福井ってあまり華がある県とかではないのですが、美味しい名産品や他人の雰囲気とか面白いんですよ。
例えばへしこや、ばってらなどの鯖料理。越前カニやウニ、サバなど海鮮が有名ですね。エチゼンクラゲも最近では食用として売り出しています。地元ではありませんが、京都ではクラゲアイスとかもあるみたいです!(越前クラゲは体調2メートル150キロになる大型クラゲです。)
地元に帰って久々に食べた刺身は美味かった……!サーモンとかハマチとか口の中でとろけるんですよ!こんな美味いのか海鮮物は……とただただ感動するのでぜひ食べていただきたい……!

後はモンドセレクション金賞を会得した五月ヶ瀬は福井の銘菓としても有名です。また米が美味いことでも有名ですね。黒龍や梵など純米大吟醸の日本酒は世界でも有名です。越前そばや、永平寺のごま豆腐、福井梅などたくさんの美味いものがあります。水が綺麗であることから自然の恵みからつくられた食べ物は絶品です。そしてオムライスの上にとんかつが乗ったソウルフードボルガライス………。今回の作品の中にもいくつか潜り込む予定です……ふふ。

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ヨコガワ分店のボルガライス

食べ物以外だと眼鏡がやはり有名ですね。巨大な眼鏡のオブジェが山に刺さっている(実際は刺さっているわけではありませんが)姿は福井ではおなじみな姿です。また、越前焼や漆器なども有名です。福井全体が一見は地味ですが、たくさんの暮らしにとっての魅力が詰まっています。

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上:越前焼/下:漆器

福井県は都会か田舎なら間違いなく田舎な場所です。私が今でも衝撃だったのは、セブンイレブンが高校二年生の時に福井に初めて出来た時です。それまで、福井にはセブンイレブンなんてありませんから、もちろんCMでセブンイレブンをみることもなく、私はサークルKサンクスと、ファミリーマート、ローソンしか知りませんでした。そして加藤が大好きなスターバックスは県に4つだけあります。驚きました。コンビニってこんなに冷凍食品が充実してるのかと……、冷凍食品やアイスのコーナーが自動ドア付近にない事にさらに驚いたのを今でも覚えています。後は地下鉄なんてもちろんなくて路面電車と車が並走しています。福井のショッピングセンターに遊びに行くときは、いつも路線電車に乗って山や田んぼ道を横切って遊びに行っていました。

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人や田舎暮らしの風景や方言はまた次回作品で……。
これから脚本を書いたり構想を練って行ったりするのですが、また何度か調べに行き、”地元”で暮らすって?、”地元を離れて”生きるって?”学校”って?”姉妹(家族)”って?を追求した、空降る飴玉社らしさのある初のコメディ作品にしていきますので、もしよろしければご興味持っていただけると幸いです……!

それでは、皆さん三連休最後の夜を。お疲れ様です。




※SNSへの写真のアップの許可をいただいています。

空降る飴玉社
加藤

小説:好きに語ろう『ふたたびの虹』

こんばんわ。
空降る飴玉社加藤です。


さて、今回は公演が終わって少しゆっくりしたところですし、加藤が読んだ本を紹介します!
一週間から二週間ごとに紹介していく予定ですので、よろしければお酒の肴などにどうぞ。
加藤は芥川龍之介灰谷健次郎作品がとても好きで、芥川龍之介の『河童~どうかKappaと発言して下さい。~』を脚本に起こしたものを上演したこともありました。この二人の作品もどこかで紹介していきたいです!

好きなものを好きに語ってしまおうのスタンスで語って紹介していきますので、お気軽にどうぞ!


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『ふたたびの虹』柴田よしき

「こんなお店、あったらな…」
ひとり静かに飲みたい夜を、幸せにしてくれる場所がある

東京・丸の内の片隅にある小料理屋「ばんざい屋」。女将の作るちょっぴり懐かしい味に誘われて、客たちが夜な夜な集まってくる。クリスマスの嫌いなOLの悩み、殺された常連客がひそかに抱いていた夢、古い指輪に隠された謎と殺意……。数々の人間模様をからめながら、自らも他人(ひと)にいえない過去を持つ女将が鮮やかに解決する恋愛&ヒューマン・ミステリーの傑作。


ヒューマン・ミステリー。人同士が交わることによって起こっていくストーリーの転換と、連作短編ならではの脇役が主張しすぎないバランスの良さがあります。女将が出す京料理”おばんざい”が話の雰囲気を優しくまろやかに、しっとりに仕上げるので、夜のゆっくりしている時に私は読んでました。連作短編がもともとドラマでも好きな形式なので、主人公が一歩引いたところにいて、それぞれの短編の中のメインになる脇役の隣にしとやかに佇んだ存在感もとても読みやすく、あっという間に一冊読み終える、リラックスしてじっくりと楽しめる作品です!
一冊の中にたっぷり七話。それぞれにでてくるおばんざいがもう、食べたい…!私は、”桜飯”これが一番心惹かれました…!文章から優しさや、側に寄り添ったような甘みあるおばんざい達の雰囲気が伝わってきます。食べたことないのに、懐かしさで満たされます……。

七話、それぞれに他人の人生が描かれています。主観的すぎるわけでもなく、客観的すぎるわけでもない。私はこの小説の、心地のいい距離感で最後まで付き合えました。それぞれの脇役たちの人生全てが見えるわけではもちろんないけれど、ところどころにその人の暮らしや生き様が見えて、奥に隠された哀しみや途方もない葛藤や、いつまでも取れない記憶の引っかかりが所々に見えて、その登場人物の中に入ることも、全体を見渡して読むことも出来る、何回でも違う読み方で楽しめます。

この『ふたたびの虹』は続編があるのと、ドラマ化された小説です。映像を私はまだ観れてないのですが、文字や言葉から情景が浮かんでくる小説なので、それが映像にした時にどういう視点で作ったのか、色とりどりで優しいお万歳はどういう見た目で出てくるのかとか、女将はどういう人柄と滲みをしているのだろうかととても気になっています。あー、早く観ないとなあ……。

この小説、ただただ綺麗じゃない。そこにはリアルな人生の感情があって、でも人生を歩んだからこそある深みと、女将のしなやかで素朴で、でも華のある存在が魅力ある小説です。

もしよかったら読んでみてください。一押しです!


では、今回はここでお邪魔します。
ではでは、おやすみなさい……。




空降る飴玉社
加藤

『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』を終えて

こんばんわ。
空降る飴玉社の加藤です。

『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』から2週間が経ちました。
この度は『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』にご来場いただいた方々、足元が悪い中本当にありがとうございました。この公演で”芝居が出来た”のも観に来て下さったお客様のお陰です。
そしてご協力いただいた皆様、参加してくれた座組もありがとう。


さて、二週間しかたっていないのに、レターツリーに参加してくれていた座組のメンバー達の公演がこの二週間で立て続きにありました。そして近々あります。いやあ、みんなの活躍すごいものです!
私はこの二週間、仕事に力を入れつつ、新しい戯曲のプロットを書いたり、新しく挑戦しようと狙っていたりなど……元々一人遊びが大の得意なので、毎日何かしらちょこちょことしています。



………さて、お礼の為にブログを書こうとした次第ですが、後書きみたいなものも少々。そして前回公演『So long, but』の話もちょこちょこ。

『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』を書こうと思ったきっかけは前回公演の『So long, but』を終えてしばらくしてからでした。『So long, but』という作品は、私が社会人になって初めての作品でした。そして久々の役者として舞台に立たない、脚本・演出としての挑戦の芝居で、大学では出会わなかった人達とする芝居でした。結論から言うと、とても難しかったし、こんなにひとつのものをつくるのはしんどいのかと、私が脚本・演出を初めて担った大学二年生の時と似た感情を抱きました。

『So long, but』は「鬱治療や自殺防止の為、脳に機械を埋め込み、感情をコントロールする。」『心の機械化』をした「主人公・初」と義弟で「もう一人の主人公・歩」の家族を諦めきれない人に贈る芝居でした。

もうね、本当にね、びっくりするくらいね、とてつもなく難しかった!!脚本も演出もそうだし、役者の演技や裏方が持ってきてくれたものの統一とか、自分で設けた世界観のルールが自分のプランの邪魔したりだとか。人が集まってひとつのものをつくる難しさを改めて、身をもって感じました。
それでも、観てくれる人がいて、その人達が本番中帰らずに最後まで観てくれた。これは成功である。しんどかったけれど、最後は本番迎えられて良かった。…………とは思わなかった。それだけではなかった。日本の演劇で途中で帰ってしまうなんてことはそうそうないと思う。それは、観客も観客を演じている節があるから。映画でも演劇でも。それに小劇場なんて客席同士の距離が近く、客席全体も広くない。自分が立てば他の人の妨げになるという意識があるから。それだけで成功だなんては私は思いませんでした。

もちろん楽しんでくれた人もいて、観ながら考えてくれた人もいた。座組全員真剣に最高の選択をした。だから『So long, but』という作品は本番を迎え終わった時に間違いなく完結しました。観に来てくれた人に自分たちが人に観せることができる形で観てもらう事が出来たから。改めて、その度はありがとうございました。自分自身が、演劇をつくっていく上で、もっと密に考えなければいけないものがたくさんあるのだと、終わって改めて感じました。


少し熱くなってしまいましたが、『So long, but』が終わった後、燃焼した私は、また一人遊びを黙々としていたのですが、唐突に「あ、私ってそんな大した人間じゃねえわ」と思いました。それは謙遜でも悲観でもなく。俗に言うモブです。それで、長い長い思春期を終えたように思いました。23歳になってやっと思春期卒業って……と自分で自分にドン引きましたが………。
そうした時に、「特別でもなんでもないし、漫画みたいにヒーローやヒロインになれないし、ちやほやなんてされないし、急に自分が評価される都合がいい世の中じゃないし、運命があるとしたら、平等なんてかなぐり捨てられてるようなものだけど……。それでも一人の存在として成立出来ているのなら、それはそれでありかもしれん。」と思いました。そして、俗に言う”モブ”に焦点を当てた人生の切り抜きを作品にしたら面白いのでは?と思いレターツリーを書きました。
一人一人、存在としての人生があり、交わってストーリーが展開していく。現実もそうだと思っています。普段表に出さないものだけれど、人はもちろん何かを考えて生きています。それが理解や共感が出来なかったとしても。身近で間近。長い文章脚本や論文以外で書かないから、このブログを書くのも難しいなあなんて思っています。そして結論はいつも芝居って難しいけれど面白いなあ、辞めないなに落ち着くわけです。



『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』はたくさんの人に支えられながら、今回無事終えることが出来ました。私の演出を理解しながら、舞台に立ちその役として生きてくれた役者、世界観と世界線を立体化して、舞台をつくってくれたスタッフ全部署。本当にありがとう。



そして、今回観に来て下さった方々、本当にありがとうございました!
台風が近づいていて、天候が左右されている時期に足を運んでくださり、観てくださったこと、とてもとても嬉しく思います。
皆さんにとって、『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』の100分に、何かしらの価値があればと思います。

そして、このブログを最後まで読んでくださったことも。



それでは、『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』にご来場いただき誠にありがとうございました。


それでは。


2016.10.5
空降る飴玉社 加藤

期間限定メンバーと次回公演の参加メンバー募集について

お疲れ様です。
空降る飴玉社です!
前回公演『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』にご来場いただいた皆様、ご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。無事全公演を終えることが出来ました。


空降る飴玉社期間限定メンバーの募集
さて、今年の12月から空降る飴玉社は活動3年目に突入いたします。そこで2017年1月~7月の約半年間共に活動してくれる、期間限定メンバーを募集いたします。

空降る飴玉社では常に“人生の切り抜きを芝居にすること”を目標として作品づくりに力を入れて来ました。俳優、スタッフ共に様々な視点を切り口に、作品を繊細に丁寧につくることを第一に作品をつくってきました。
空降る飴玉社の演劇に興味がある方、知らないけれど自分の人生経験を何かしら作品に起こしてみたい方などお待ちしております。ぜひぜひご応募ください!

募集内容:
俳優、照明、音響、制作

内容詳細:
全体:
・2017年3月と7月上演予定の公演への参加が可能な方。
・2016年12月下旬~2017年7月公演終了までの活動に参加できる方。
・活動開始から月1予定のMTに参加できる方。
俳優:
・高校生~30歳までの役者経験のある女性、または女性役に興味のある方。ブランクは問いません。
・2017年1月週4の稽古、2月週5の稽古に8割参加できる方。
・2017年4月週2~3の稽古、5月週4の稽古、6月週5の稽古に8割参加できる方。
照明・音響・制作:
・演劇での経験のある方。年齢は問いません。
・演劇経験がなくとも、社会人経験のある方。
その他:
・上記部署以外でも興味のある方もぜひご応募ください。内容詳細は全体、照明・音響・制作の欄をご参考下さい。

活動場所及び稽古時間など:
活動場所は主に京都市内の中京区、北区、左京区となります。また稽古時間は平日は18:00~21:00(22:00)、休日は13:00~17:00がメインとなります。

参加費:公演1回につき出演者の方には10000円の参加費をいただきます。

応募・問い合わせ:
skycandydrop@gmail.comまでに以下内容をご連絡ください。
①名前(芸名)、②性別、③年齢、④希望部署、⑤ご自身の都合の良い日時

日程調整を行い、お話の場を設けさせていただきます。その時に公演場所やチケット代などの詳細についての企画書をお渡しいたします。お話は先着順で行わせていただきます。実際にお話させていただいた上でこちらでも参加をお願いするか判断をさせていただきます。ご了承ください。



2017年3月公演詳細
空降る飴玉社『ボルガライスと四人姉妹!』(仮題)

ボルガライスと四人姉妹!』(仮題)

旭井洋食店(1号店)は今日もなんだかんだで元気です!

あらすじ
「拝啓 町、竜子、杏、小夜へ
お前達に手紙を出すのはこれが初めてかもしれません。いきなりですが、お父さんはお母さんと一緒に、旭井家オリジナルのボルガライスを世界に広めるために、スペインに旭井洋食店2号店を開店することにしました。いきなりのことで驚くかもしれませんが、父さんの10年越しの夢です。つきましては事後報告となりますが、杏、旭井洋食店(1号店)をしばらくの間よろしくお願いします。四人で協力して暮らしてくれ。  父・母より」

「………は?」

旭井家には四人の娘がいる。ロリータファッションのアパレル店員で男運が壊滅的に悪い「長女・町」、アクセサリー作家として活躍し七年振りに地元に戻ってきた自由人「次女・竜子」、大学卒業後就職活動に失敗し旭井洋食店を手伝っていた次女とは険悪である「三女・杏」、そして、絶賛思春期真っただ中で不登校の高校生「四女・小夜」。父と母からの手紙をきっかけに再び旭井家の四人姉妹が旭井洋食店(1号店)に揃う。

空降る飴玉社では初挑戦となるコメディ芝居。
地元で暮らすって?離れて仕事するって?学校って?姉妹って?
故郷・福井県の田舎での暮らしをモデルに人生(生活)を描く。
色々あるけれど、こ、コメディだから!あくまで、ベースはコメディだから!!!

 
ボルガライスと四人姉妹!』(仮題)
公演予定日:2017年3月上旬(4ステージ)
会場:京都市左京区ギャラリー



空降る飴玉社とは?
2014年12月劇団鬼灯・元座長の加藤薫が立ちあげた演劇団体。日常の延長線上にあるドラマチックに注目し、人生の切り抜きを芝居にすることを目標とした作品づくりを行う。環境や年齢、経験から来る人々のリアルを繊細に描いた会話劇を主に行っている。

2015年3月『ドロップストーリー~赤い飴、その味を忘れてしまったふりをして~』
2016年3月『So long, but』
2016年9月『レターツリーが紡ぐ時を、待ち侘びて』


空降る飴玉社と、一緒に芝居をつくってみませんか?
皆様のご応募お待ちしております!
ぜひぜひよろしくお願いいたします!!

2016.10.2
空降る飴玉社運営部