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京都で活動する演劇団体『空降る飴玉社』のブログ

小説:好きに語ろう『午前0時の忘れもの』

こんばんわ。
空降る飴玉社の加藤です。
先週あたりからグッと寒くなり、秋を吹っ飛ばして初冬のような寒さになりましたね。だと思ったら今日また少し暑くなりましたね。気温に振り回されがちな今日この頃、皆さんはどうお過ごしですか?
まだ紅葉の季節には早いみたいで、早く紅葉の綺麗に染まった木々が見たいなあと思っています。今年は去年より早く冬が早く来そうなので、今のうちから秋を堪能しておこうと、色々計画を立てています。

今回も加藤のおすすめの小説を語っていきます!


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『午前0時の忘れもの』赤川次郎

愛していれば、奇跡もきっと起こる―――。
高速バスが湖に転落する事故で、四十人余りの乗客が帰らぬ人となってからちょうど一ヶ月。湖の底に沈んでしまった死者たちから愛する人たちへとメッセージが届く。メッセージに導かれ、深夜のバス・ターミナルに集まった人々が出会う不思議な出来事とは?

生きることの切なさと命の輝き、人を愛することの素晴らしさを描いた、赤川ファンタジーの傑作!


この小説は最初から最後まで楽しめる作品です。
中表紙を捲った後の始めのページにある著者からのメッセージ。このメッセージが、ファンタジー作品を書いたことのある自分は強く共感し、響き、胸を抉られました。そこから、この作品の深みとドラマチックさを噛みしめながら、ストーリーを楽しみました。
この作品の登場人物は出てくる全員がメインどころの個性や事情を抱えています。年齢も職業も、生きざまも様々です。そんな日常では触れ合う機会がない人達が、バス・ターミナルに集まり同じ時間を過ごす。それだけでもドラマが生まれる予感があります。そして集まった理由からも、それぞれのドラマを読み解くことが出来ます。この話は『再会』と『別れ』が同時に描かれています。よく死者と残された人達とのバランスが同率ではない作品は見かけますが、この作品はフィフティフィフティで描かれています。どちら側にも人生が見え、どちら側の心情にも共感できる部分がたくさんちりばめられています。死者だけど、生きていた頃と変わらぬその人達の言動や人となりがそのまま描かれていて、違うのは心臓が動いているかいないかだけです。『先行く人達のメッセージ』と『残された人達の未来』がどうか交わり続けますように、と願わずにはいられない作品です。
こんな奇跡、理屈で考えたらないだろうと思うけれど、それでも、この話みたいなことがこの世のどこかでは起こっていそうだと、期待するし、期待したいと思える、間違いない『人の奇跡』の話だと思う。
学生も社会人も、結婚している人も、失恋した人も、今を迷っている人も、抜けられなくなっている人も、きっと共感し、感動できる作品だと思います。
感動するってとても難しいことですからね。


赤川作品のもう一つの魅力は何と言っても作品のタイトルです。
どの作品でもタイトルと言うものは、作品の導入部分であり、作品の核の部分を担い、作品の比喩、作品の大筋のイメージと雰囲気を伝えてくれるものです。私は題名が作品の中見と同等に物書きとしては一番こだわるべきところだと思っています。本屋に入ると、まず一番最初に目につくのはタイトルです。そこから表紙のイメージ、裏のあらすじへと興味が移ります。やっぱり買うのは題名で選ぶことがダントツで多いですね。
赤川作品の題名はどれもドラマ性がある題名ばかりです。矛盾していたり、一見は合わせることない二つの単語を埋め込んで題名にしているものも多く、矛盾をはらんだ単語同士がつくる非常さが、題名の中にあるドラマへの期待を高めてくれます。そして使う単語が誰もが一度は耳にしたことのあるなじみの単語が多いです。その単語に私は安心して先入観なく、じっくりと作品に入ることが出来ます。今回紹介している『午前0時の忘れもの』も寝静まっている時間帯である”午前0時”のこんな時間帯に一体何の”忘れもの”を誰がしたのだろうと、時間帯×名詞の非常さが出ていて興味をそそられました。タイトルにもたくさんのドラマが詰まった赤川作品は、たくさんの体験をさせてくれます。これも赤川作品の魅力ですね!


もしよかったら、
『午前0時の忘れもの』赤川次郎
ぜひ読んでみてください。そこにはたくさんのきらめきと、リアルと、奇跡が詰まっていますので……。

それでは、今回はこの辺で。
秋の味覚たくさん楽しんでください。
では。




空降る飴玉社
加藤