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京都で活動する演劇団体『空降る飴玉社』のブログ

小説:好きに語ろう『トリツカレ男』

こんばんわ、空降る飴玉社の加藤です。
一気に寒くなりまして、末端冷え性の私は手足が冷たい毎日を送っています。
汁物が美味しい季節になりましたね。私は何でも汁物にしてしまいます。お気に入りは白菜と大根と生姜のとろみスープです。うまいんですよ~腹もちもいいし、野菜美味しいし、体あったまるし…。これからもっと寒くなるし外せませんね…!

さて、今回も小説を好きに語って行きます!!
今回は加藤がここ近年で一番好きな作品……こちらです!


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『トリツカレ男』いしいしんじ

ジュゼッペのあだ名は「トリツカレ男」。何かに夢中になると、寝ても覚めてもそればかり。オペラ、三段跳び、サングラス集め、潮干狩り、刺繍、ハツカネズミetc.そんな彼が、寒い国からやってきた風船売りに恋をした。無口な少女の名は「ペチカ」。悲しみに凍りついた彼女の心を、ジュゼッペは、もてる技のすべてを使ってあたためようとするのだが……。
まぶしくピュアなラブストーリー。



この小説は読書が苦手な人でも最後まで楽しみながら読める一作だと思います。
全部で160頁。ちょっとした時間の合間でも、気負わずにストーリーに入り込める優しさと世界観を持っています。この作品の魅力は何と言っても登場人物みんなが個性豊かなところ!そして主人公のジュゼッペとヒロインのペチカ、ハツカネズミ、タタンのメインどころの四人(三人と一匹)がとても情に深い。それぞれが起こす行動が、”それぞれの登場人物の為の行動”ばかりで溢れています。その誰かの為の行動が人を動かし、人を少しずつ変え、笑顔にしていく。それをとても間近で感じることが出来るのがこの作品です。読んでいて、きらきらとした気持ちが胸の底から溢れだしてくるような温かみがあります。

「トリツカレ男」のジュゼッペはトリツカレたものにはとことん極めていきます。いや、とことんトリツカレるのでしょうか……。寝ても覚めてもそればかりに熱中してしまう癖があります。そして、そのトリツカレたものに夢中になって奔走する姿は、はたから見たらきっと可笑しいのに、”辛い”部分も多いのに、少しもそれらを感じさせない。ジュゼッペのひたむきさは読んでいると、読んでいるこちらが「がんばれ!」と応援したくなるような、いいなと憧れるような気持に駆られます。そして、そのひたむきさの形に知らず知らず触れていくペチカの悲しみに凍った心が、少しずつ少しずつ溶けていくところにも、ほっこりします。
だけど、この『トリツカレ男』、そのままハッピーエンドに進んで行くわけじゃない。ペチカの心は溶けていく一方で絶対に溶けきらない”訳”があった。この最大の試練へのジュゼッペの行動にも、読んでいるこちらは固唾を飲んで見守ることしか出来ないのですが、読んでいる自分がジュゼッペの友達のハツカネズミの気持ちのようになりながら、この「トリツカレ男」の為に何かをしたくてしようがないと思ってしまいます。


この『トリツカレ男』最大の魅力はやはり「ジュゼッペ」という主人公にあるように思います。この一風変わった「トリツカレ男」がペチカの為に引き起こす奇跡。ジュゼッペとハツカネズミ、ジュゼッペとペチカ、ペチカとタタン、そしてジュゼッペとタタン………。トリツカレたから起きた奇跡の展開と人間模様と関わりは、他の作品ではなかなか見れない、純粋さとひたむきさと馬鹿な程の強いきらめきがあります。まさにピュアです。

そして、このジュゼッペが生まれ育った町の風景や、ペチカがジュゼッペと出会う前の思い出の風景も印象深く、場所や物からもその人となりを感じることが出来ます。登場するたくさんの場所やシチュエーションなどの世界観も、物語の色を濃く映してくれてます。ここにもぜひ注目して下さい。魅力的です。

少し疲れてる人や、ゆっくりしたい人にぴったりの作品だと思います。



もしよろしければ
『トリツカレ男』いしいしんじ
読んでみてください。



それでは、今日はこの辺で………。
暖かくしてゆっくり休んでください。
ではでは。


空降る飴玉社
加藤